2010年6月5日土曜日

カラヤン録音小史 - 08


1970年代、DGでは新ウィーン楽派管弦楽曲集など、EMIではワーグナーの管弦楽曲集など、カラヤンは少なからず名盤を残している。


シェーンベルク / 浄夜
※ 新ウィーン楽派管弦楽曲集より
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1973年(DG)


ワーグナー / 管弦楽曲集 第1集&第2集
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1974年(EMI)

どちらからも、あまりにも美しい音が溢れ出す。陶酔感に浸るのみ。



録音にはプロデューサーとしてハンス・ヒルシュ(DG)やミシェル・グロッツ(EMI)たちが参加している。

だが本当のプロデューサーはカラヤン自身だったのではないだろうか。

この頃から帝王・カラヤンは録音現場で “自立” し、その結果、“裸の王様” と化す。

カラヤンは自分が中心となり、録音現場を仕切る自信を持っていたのだろう。

しかしこれは録音上、正しい姿であるとは思えない。

客観的な目(耳?)を持ち、音楽の知識を備えた力量のあるプロデューサーとの共同作業を通じてこそ、カラヤンの音楽は更に進化・深化したのではないだろうか。

この頃からカラヤンは音楽の流れを大切にするという理由で、細かな部分の再録音を拒否するようになったらしい。

これはカラヤンの美学からか、カラヤンの怠慢からか? 残念ながら、私には後者のように思えて仕方がない。

カラヤンに自由に録音させれば当然カラヤンらしい音楽が生まれてくるだろうが、それが必ずしも高品質なものとは限らない。

当時のDGやEMIは、カラヤンに任せておけばある程度の品質は間違いないし、必ず売れるだろうと安易に考えていたとしか思えない。

カラヤンなら1950年代後半から1960年代後半にかけてウィーン・フィルかベルリン・フィルを指揮し、録音したものを推薦するのは以上の理由からだ。

カラヤン録音小史 - 序
カラヤン録音小史 - 01
カラヤン録音小史 - 02
カラヤン録音小史 - 03
カラヤン録音小史 - 04
カラヤン録音小史 - 05
カラヤン録音小史 - 06
カラヤン録音小史 - 07
カラヤン録音小史 - 09 ・・・ つづく
カラヤン録音小史 - 終

update 2010/06/05

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