2010年6月5日土曜日

カラヤン録音小史 - 09


カラヤンは最新技術が大好きだ。

1980年代はデジタル録音の時代。

新しいもの好きのカラヤンがデジタル録音に興味を持たない訳がない。

デジタル録音時代に突入すると、直ちにカラヤンは4度目のベートーヴェン交響曲全集をベルリン・フィルと録音する。

1度目:フィルハーモニア管弦楽団 (EMI録音:1951年~1955年)
モノラル録音 ※ 一部ステレオ録音

2度目:ベルリン・フィル (DG録音:1961年~1962年)
ステレオ録音

3度目:ベルリン・フィル (DG録音:1975年~1977年)
4チャンネルステレオ録音

4度目:ベルリン・フィル (DG録音:1982年~1984年)
デジタル録音

いずれのベートーヴェン交響曲全集も当時の最新録音技術で収録することでDGから承諾を取り、同時にそれをアピールすることで新たな購買意欲を巧みに刺激する。

商売人・カラヤン、ここにあり!

4度目の録音は1982年から始まっているところがポイントで、この年にカラヤンは自分の得意なレパートリーを映像化するため、モナコに映像制作会社・テレモンディアルを設立する。

当然カラヤンはベートーヴェンの交響曲を演奏する姿をテレモンディアルに映像として残すのだが、この4度目のベートーヴェン交響曲全集はテレモンディアル制作のビデオ作品のサウンド・トラックとして発売される。

またこの交響曲全集を制作したのはカラヤンとその郎党ミシェル・グロッツで、原盤権を保有するのはカラヤン自身であり、DGは発売ライセンスのみ保有している。

DGもなめられたものだ。


ベートーヴェン交響曲全集
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年~1984年(DG)



ベートーヴェンの交響曲同様にカラヤンが得意としていたブラームスの交響曲も3度目の全集(すべてDG録音)が1986年から1988年にかけてベルリン・フィルと共に録音される。

1980年代はデジタル録音による十八番の再録音時代と言えよう。

録音に携わればベルリン・フィルの楽団員も副収入を得られるが、カラヤン支配下でR・シュトラウスなども含めて、代わり映えの無いレパートリーの再録音ばかりさせられていたら、楽団員のモラルはついつい低下するだろう。

またベルリン・フィルには自由な録音を許可しない反面(推測:自由に録音する時間も無かったと思うが)、カラヤン自身はこの頃からウィーン・フィルとしばしば録音を行う。

1982年に生じた “ザビーネ・マイヤー事件” も含み、カラヤンの自分勝手な振る舞いにより、カラヤンとベルリン・フィルとの関係は悪化の一途をたどる。

カラヤン録音小史 - 序
カラヤン録音小史 - 01
カラヤン録音小史 - 02
カラヤン録音小史 - 03
カラヤン録音小史 - 04
カラヤン録音小史 - 05
カラヤン録音小史 - 06
カラヤン録音小史 - 07
カラヤン録音小史 - 08
カラヤン録音小史 - 終 ・・・ つづく

update 2010/06/05

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