2005年12月8日木曜日

ジョン・レノンは二度死ぬ?


それは1980年12月8日。

今からもう25年も前の事だ。

その日からジョン・レノンは聖人として我々とは別の世界に閉じ込められ、そして《Imagine》は平和の聖典になった。

それからというもの、12月8日が訪れる度に、「こんな窮屈な世界から開放してくれ!」というジョン・レノンの声が聞こえて来るような気がしてならない。



ジョン・レノンをもう一度聴いてみよう。

『Please Please Me』(63年)
『With the Beatles』(63年)
『A Hard Day's Night』(64年)
『Beatles for Sale』(64年)
『Help!』(65年)

少し潰れた、とても美声とはいえない鼻声でシャウトし、時には語りかけるようにジョン・レノンは歌う。初期のビートルズにはそんなジョンの魅力がたっぷり詰 まっている。

短期間にこれほど沢山の名曲を作り、素晴らしいヴォーカルで歌い上げたのだから、この時期がジョンの全盛期とも考えられる。そしてこの時期に ジョンは表現としての “ロックの技法” を完全に体得する。

その後も《Help!》、《Tomorrow Never Knows》、《Strawberry Fields Forever》など、自分の “今” をテーマに、時には直接的に、時には暗喩を込めてジョン・レノンは歌い続けてきた。

ビー トルズ解散後、ジョン・レノンは自分の “今” を歌うことから、“ジョン・レノン” について頻繁に歌うようになる。まるでジョン・レノンを観察するように歌う《Mother》、《God》。

『Imagine』に収録されている 《Crippled Inside》や《Jealous Guy》なども自分自身というよりも、“ジョン・レノン” について歌っているようだ。時にはその “ジョン・レノン” をねじ伏せようと、苦しみ、時にはそれを無邪気に受け入れる。また “ジョン・レノン” をフィクション化することさえある。



私にとってのジョン・レノンは単なる Love & Peace の聖人ではない。

ジョンは我々と同じように疲れ、悩み、怒り、そして笑い喜ぶ身近な兄貴のような男だった。切れば血が流れる生身の男だったし、“ジョン・レノン” を観察、演出する二重人格ロックン・ローラーだった。

しかしいつの間にか、ジョンから人間としての生身の部分やロックン・ローラーとしての毒とハッタリの部分が削ぎ落とされてしまった。

ジョンは《Imagine》と突然の悲劇的な死により聖人に仕立て上げられたのだ。

ジョン・レノンは胡散臭い平和主義者たちに聖人に祭り上げられ、別世界に幽閉された。

極上のロック・スピリットが秘かに葬り去られようとしている。

ジョン・レノンを二度も死なせてはならない。


John Lennon / ジョン・レノン
Plastic Ono Band / ジョンの魂


John Lennon / ジョン・レノン
Imagine / イマジン

update 2005/12

0 件のコメント:

コメントを投稿