2004年3月30日火曜日

麗しのアヌーク・エーメ / 『男と女』


何事も理由は単純だ。

それは高校3年生の春、だから1973年のことだ。繁華街を歩いていると、ある映画のポスターが目に止まった。男女が絡み合いながらキスしているシーンの上には洒落たロゴで『男と女』と描かれていた。

これはエッチな映画に違いない。私は直感的にそう確信した。そして躊躇せずにその映画を観ることに決め、切符を買った。

しかし映画は少しもエッチではなく、その点では期待外れだった。だが『男と女』はそれ以上のものを17歳の私に与えてくれた。それは “大人の感覚” とでもいうべきものだ。



寒そうな海岸でシープスキン風のコートを着た女性が子供に「赤頭巾ちゃん」のお話をしている。無造作に髪の毛をかきあげながら、楽しそうに微笑みながら話している。

彼女の少し個性的な横顔を見て、くらくらっとしてしまった。

それがアヌーク・エーメ / Anouk Aimée との初めての出会いだった。



1971年の春、私は大阪市内の高校に入学した。

郊外の自宅から通学するには1時間以上かかった。しかし定期を利用して、学校から帰る途中に繁華街をうろつけるが楽しかった。だから長い通学時間はそれほど苦にならなかった。それに私服だったから、制服はすでに廃止されていた、街をうろつくには好都合だった。

ぶらぶらと歩き回ったり、レコード店に立ち寄ったりしているだけで楽しかった。郊外の住宅地には無い、都会特有の刺激が溢れていたからだ。

夜になるとネオンが灯り、そこには大人の世界が広がっていた。




誰でも一度は耳にしたことがあるフランシス・レイ作曲のメロディー、♪ シャバ・ダバ・ダ~ ♪ シャバ・ダバ・ダ~ ♪ モノクロと淡いパステル調のカラーで描かれる男と女の微妙な心理状態。そんなスタイリッシュな音楽と流麗な画像に大人の会話と独白が絡みあう。

物憂げで、少し倦怠感を漂わせるアヌーク・エーメは大人の魅力に溢れていた。『男と女』が封切られたのは1966年だから、アヌークは当時30歳前半だったはずだ。

彼女にはナタリー・ウッドとは違う、成熟した大人の雰囲気が漂っていた。美しさ、愛らしさではナタリー・ウッドだが、その存在感と女性としての完成度ではアヌーク・エーメなのだ。私もすでに高校3年生で、そのあたりの違いが何となく分かるような年頃になっていた。



『男と女』は大感動するタイプの作品ではないが、そのみずみずしさは今でも色あせない。それは一番お洒落な大人の恋愛映画として心に残っている。

この映画を17歳の時に観てよかったと思っている。あまりにも偏りすぎていた当時の女性観に、アヌーク・エーメが一撃を与えてくれたからだ。


Un Homme et Une Femme / 男と女
サウンドトラック版

update 2004/03

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