2007年3月15日木曜日

Baden Powell / バーデン・パウエル


Solitude On Guitar / 孤独
1971

研ぎ澄まされたボサ・ノヴァ・ギターが味わえる。

《恋人の瞳》、《シャラ》、《君への面影》、そして《映画『いそしぎ』のテーマ》など、どの曲でもバーデン・パウエルの歌心溢れるギターが冴え渡る。

そしてどの曲からも透明感に包まれた悲しさがポロリと零れ落ちる。

ベースとドラムをバックに淡々とギターを弾くバーデン・パウエル。その切なさがたまらない。



さて、素朴な疑問。

バーデン・パウエルは1937年、ブラジルはリオデジャネイロのバ-レ・エ・サイに生まれる。

パコ・デ・ルシアは1947年、スペインはカディスのアルヘシラスに生まれる。

二人のギタリストの歩みを見ると、生まれた年の違いが二人に決定的な差をもたらしたのではないだろうか? と考えこんでしまう。

バーデン・パウエルは1960年代後半からヨーロッパで活躍を始めた。

しかし本作『Solitude On Guitar / 孤独』からしばらくして、1970年代半ばから1980年代半ばまで約10年間、ミュージシャンとして一番脂が乗っている頃にバーデン・パウエルは私生活や健康面の問題でセミ・リタイア状態に陥っている。

この失われた10年間に音楽界は大きな様変わりを見せた。ジャンルの垣根を越えて音楽を異種交合させるクロスオーバー系の音楽が幅を利かせるようになったがこの時期だ。

そんな音楽界の流れに乗ったパコ・デ・ルシアは70年代後半からアル・ディメオラやジョン・マクラフリンと派手な活躍を始め、世界的な名声を手にした。しかし活動休止状態に陥っていたバーデン・パウエルはこの流れに乗ることができなかった。パコ・デ・ルシアと同じ天才肌のギタリストであるバーデン・パウエルは恵まれた活動の場を得ることができなかった。

絶好の時期に活躍することができなかったバーデン・パウエルは悪い星の下に生まれた、単なる薄運のギタリストなのだろうか?

それともバーデン・パウエルは生まれたのが10年ばかし早すぎたのだろうか?

疑問は残る。

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