2004年8月20日金曜日

Billie Holiday / ビリー・ホリデイ


Strange Fruit / 奇妙な果実
1939-1944

男のような名前だ。

しかしビリー・ホリデイは女なのだ。

ビリー・ホリデイは西部劇で有名なドク・ホリデイと何の関係も無い。

冗談はさておいて、古い録音の擦れた音の向こう側から聞こえてくるのは、しっとりとしたブルース・フィーリング溢れるビリーの歌声だ。

彼女の代表曲として有名な《Strange Fruit》はリンチの後、ポプラの木に吊るされた黒人の死体がまるで “奇妙な果実” に見えることを歌った人種差別を告発する壮絶な歌だ。

淡々と枯れたようにビリーはシリアスなテーマを歌い上げる。そしてこの曲は1939年ビルボードのシングルチャート16位にランクされるヒットとなる。それだけこの曲には聴く人の心に訴えかけるものがあったのだろう。

彼女の歌い方からは技巧的なものが一切感じられない。普通に語りかけるような歌い方は、まるで人生達観の境地。ビリーは歌の後ろから「人生に多くのことを望んではいけないわよ」とささやいている。

余分なものを全て削ぎ落とした、ある高みにまで達した魂の歌声がここにある。

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