2000年9月1日金曜日
弟 お・と・う・と / ザ・ウエイト
親父は4回結婚している。
つまり、3回離婚している事になる。
3回目の結婚の時に男の子が生まれた。私とは13歳年が離れている。
最初は戸惑った。どう対応していいのか全く解らん。しかし、いくら歳が離れていても、やはり小さな子はなついてくる。部屋でレコードを聞いていたり、本を読んでいてもちょこちょこ闖入してきた。一緒に風呂に入ったり、一緒にテレビを観たり・・・。
弟はテレビ番組と食べ物は同じようなものだと考えていた。だから自分の好きなテレビ番組は1人で見たがる。なぜなら、2人で見ると30分の番組が15分で終わると思っていた。
私がスペインへ行く前、弟が5歳ぐらいの頃、日曜日にはよく公園でサッカーをして遊んだ。だから今でも公園でサッカーをしている親子を見たら弟の幼年期を思い出す。弟の事を思い出す度に出てくるイメージも公園でサッカーをしているイメージが多い。
私がスペインに行く時には「行くな!、行くな!」とごねていた。
スペインから絵葉書を送ってやったりもした。弟も何度か手紙をくれた。しかし1年ぐらい経つと、弟から手紙が来なくなった。
もう小学生だし、友だちと遊ぶので忙しいんだろう、と思っていた。
そして2年後、私が日本へ一時帰国した時、弟はいなかった。
私が日本を出て1年後ぐらいに父と母は離婚し、弟は母に連れられて家を出ていた。
やってられんなぁ~!
バス・ドラムの響きが印象的な《The Weight / ザ・ウェイト》が遠くから聞こえてくる。
スペインへ行く前、ザ・バンドの『Music from Big Pink / ミュージック・フロム・ビッグピンク』をよく聴いていた。
ぎっしり詰まったアメリカン・ルーツ・ミュージック風の音楽もいいが、ボブ・ディランが描いた絵を使ったジャケット・デザインもなかなかいい。子供が描いた絵みたいだが、不思議な味があって見ていて飽きない。
地味だが名曲揃いのアルバムだ。中でもA面最後の曲《ザ・ウエイト》はずっしりと心に響く。レヴォン・ヘルムのゴツゴツとした語りかけるようなボーカルとやるせないコーラス。まさしく生きてゆくために背負わなければならない重荷のような曲だ。
弟の記憶とザ・バンドの物悲しくもやるせないサウンドは知らないうちに完全に結びついていた。
『ザ・バンド』や『ステージ・フライト』、『カフーツ』など、どのアルバムからもザ・バンド独特の渋くて重いチョコレート色をした、腹にズシンと響く「やってられんなぁ~!」サウンドが金太郎飴のように出てくる。
その後、弟とは約16年後にパリで再会した。
大きくなっても昔一緒にサッカーをしていた頃と同じ表情だったので、心の中で少し笑ってしまった。
Band, the / ザ・バンド
Music from Big Pink / ミュージック・フロム・ビッグピンク
update 2000/09
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