2004年9月10日金曜日

Joe Zawinul / ジョー・ザヴィヌル


Zawinul / ザヴィヌル
1971

このアルバムはマイルスの『In A Silent Way』収録後のストレッチであり、ウエザー・リポート結成前のウオーミングアップみたいなもの。

そんな流れの中での作品だから、このアルバムには聴くべきザヴィヌルの演奏は無い。これは従来の “リーダーの演奏が目立つ” タイプのアルバムではなく、“リーダーの音楽が目立つ” アルバムなのだ。つまり演奏家としてのザビヌルは目立たないが、ザヴィヌルの音楽が際だって目立つ、またそれしかないアルバムなのだ。なぜならここでは全員がザビヌル化されているからだ。

アイオワの大学で名誉教授となったハービー・ハンコックに捧げたザヴィヌルの代表曲、《Doctor Honoris Causa》から始まるこのアルバムは、くすんだヨーロッパ・プログレ風ジャズとでもいうべき色調に支配されている。ここで聴こえるのは彼が生まれ育った オーストリアの香りがする暗くて沈んだサウンドで、そこにはザヴィヌルの内面が見事に表出されている。

ニューヨークへ初めて着いた時の印象を音楽化したアルバムの最終曲、《Arrival in New York》は象徴的で、不安感漂うこの曲はある段階への到着点でありながら、これからのスタート地点でもあるように聴こえる。

なんといっても驚くべきは、マイルス・デイヴィスが一文を寄せていることだ。「ザヴィヌルは我々がここ数年考えていたものを拡張した。多分その考えは他の音楽家が表現し得なかったものである」。こんなところにもこのアルバムの凄さが表れている。

しかしアルバムの内容とジャケット・デザインの乖離はひどい。何の因果で禿頭のザヴィヌルの顔写真を大きく使うんじゃ!

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Dialects / ダイアレクツ


My People / マイ・ピープル

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