2003年11月7日金曜日

二人の監督 : Part 2 星野仙一と野村克也


それは全く正反対の二人だ。

しかし阪神タイガース再建にはこの両極端な二人が必要だった。

相手を刀でザックリ切り殺すタイプの星野と相手を真綿でジワジワと絞め殺すタイプの野村。

選手たちを自分の子供達か弟分のように扱い、厳しく育てる星野。選手たちを大人として、プロとして扱い、指導する野村。二人の年齢とは逆に、若い星野の方が “古風な雷おやじ” タイプの監督に見え、年長の野村の方が逆に “今風で近代的” な監督のようにも思える。



二人の行った勝つための作業からは、二人の新たな側面を見ることも出来る。

星野は球団に多額の金額を用意させ、本人が口説き落とすかのように片岡、伊良部、金本など実力のあるベテラン選手たちを獲得した。またその反面、徹底的な人員整理を行い、組織をリフレッシュさせた。それは監督業務だけにとどまらない、球団運営にも関わるゼネラル・マネージャー的な動きともいえる。

反対に野村は大型補強には以外と淡泊だった。4番、エースの補強の重要性を説いても、自らその獲得に向けて、積極的に動くということは無かった。

現有勢力を有効活用し、再生させるのが野村の真骨頂だ。また獲得する選手も赤星や藤本のように、地味ではあるが、クセのある、相手にまわせば嫌なタイプの選手が多い。派手さや話題性は無いが、野球職人としての監督の目にかなうセンスの持ち主を選んだ。

イメージ的には古いタイプのように見える星野の方が組織的、資本主義的アプローチでチームをつくる管理職的な監督で、頭を使ったID野球を掲げる野村の方が、ある意味で職人集団の親方的な監督ともいえる。

何はともあれ、このタイプの異なる二人の監督がいなければ阪神タイガースに18年ぶりの優勝は訪れなかっただろう。



宴の後には



だが、この二人の登場順には疑問が残る。

本来なら最初に星野がダメ虎たちに勝つための意志を植え付け、勝つことの意義や喜びを認識させる作業が必要だったのではないだろうか?

星野の育てた、ある意味では “高校球児” 的な選手たちに、野村がプロとしての知能、言い換えればプロとしての嫌らしさを教え込むのが本来の流れのような気がする。基礎工事の後に緻密な野球理論を植え付けてこそ長期間にわたる強いチームが作れるのではないだろうか?

確かに星野は中日ドラゴンズを2度優勝に導いた。しかしそれは2回の監督就任によるもので、一度の監督就任期間中に2度優勝したのではない。つまり短期間での優勝は出来るが、裏を返せば長期間強いチームは作れなかったとも言える。

星野は即効薬なのだ。

野村は徹底した野球理論の刷り込みにより、常時優勝を狙えるチーム造りを得意とするタイプだ。1978年の初優勝時の勢いが消え、その後の80年代は低迷していたヤク ルト・スワローズを見事に変身させ、90年代を代表する実力派チームにまで育て上げた実績がそれを見事に証明している。

野村は漢方薬なのだ。



さて、我が阪神タイガースの来年は如何に? 星野という即効薬の後、どんな薬が投与されるのだろうか? 来年こそ野村のような監督がタイガースには必要なのだと思う。確かに岡田新監督の顔や雰囲気は野村に似ているが、そのチーム作りや采配は?

update 2003/11

二人の監督 : Part 1 西本幸雄と星野仙一
二人の監督 : Part 3 西本幸雄と野村克也

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