2003年9月20日土曜日

二つの疲労感 / ユー・ガット・ザ・シルバーとワイルド・ホース


息子の運動会を観に行った。

秋の土曜日、それほど暑くもない日の運動会だった。

恒例の校長の長い開会の言葉から始まり、恒例の校長の長い閉会の言葉で終わる運動会だった。しかしこの校長の長い挨拶には毎年開口する。

まぁ、そんな事を抜きにすると、それは楽しい催しだ。

出来れば日陰の来賓席に座らせてもらって、良く冷えたビールなんかを美人の先生方からついでもらいながら観戦できれば最高なのだが、それは無理だろう。

運動会の華は “走り” だ。

個人走や対抗リレーが一番面白い。

それも低学年の1年生や2年生くらいのがほのぼのとして一番楽しい。それが高学年のものになると勝負に対する強い執着心が見えて、かなり緊張感が生まれる。それはそれで競技として面白い。しかし観ていると何となく少し辛いものがある。

椎間板ヘルニアからくる腰痛なんかとは全く無縁のチビたちが鼻の穴を大きく開き、歯を食いしばりながら、テッテッテ~ッと元気良く目の前を駆け抜けて行く姿を観ると、単純でシンプルなものが醸し出すある種の美しさと潔さを感じてしまう。



疲れを知らぬ子供たち



運動会から帰り、良く冷えたギネスを良く冷えたジョッキにつぎ、グビッグビッと一気に飲んだ。それはカラカラに乾いた喉に敷きつめられたまろやかでビターな絨毯。まさに至福の一時だ。

秋の陽を一日中浴びつづけた体は火照り、少し疲れている。しかし頭の中はなんだかリフレッシュされたようだ。なんとなく風通しが良くなったみたいな気がする。



これはローリング・ストーンズと対極の世界だ。

ブライアン・ジョーンズ死後にリリースされたアルバム『レット・イット・ブリード』(1969年)あたりからストーンズは独特の疲労感を醸し出すようになった。

それはいくら体が元気でも振り払うことの出来ない、脳味噌の随から滲み出るような気怠い疲労感だ。そいつは褐色で、鉛の様に重たく、ずっしりと頭の中に居座る。

キース・リチャーズがダルく、半ば投げやりに歌う《You Got The Silver / ユー・ガット・ザ・シルバー》には独特の疲労感がぷんぷん漂っている。

そして自己レーベルからリリースされた最初のアルバム『スティッキー・フィンガーズ』(1971年)でミック・ジャガーが切々と歌う《Wild Horses / ワイルド・ホース》あたりでこの独特の疲労感はピークに達する。



汗と埃にまみれながらも、キラキラと輝く疲れを知らぬ子供たち。

しかし彼らも生き続けることから生じる厄介な疲労感から逃れることは出来ない。

大人になる代償が訪れたその時、彼らは何を聴き、何を支えとして、この厄介な脳内現象に立ち向かうのだろうか。


Rolling Stones, the / ザ・ローリング・ストーンズ
Let It Bleed / レット・イット・ブリード


Rolling Stones, the / ザ・ローリング・ストーンズ
Sticky Fingers / スティッキー・フィンガーズ

update 2003/09

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