2004年9月20日月曜日

Tina Brooks / ティナ・ブルックス


Back To The Tracks / バック・トゥ・ザ・トラックス
1960

ティナ・ブルックスは黄昏のジャズ・マンだ。

どういう訳かティナ・ブルックスの人生は薄運で、26歳の初レコーディングから、42歳で亡くなるまで、たった14回のレコーディングしか経験していない。それも多くが未発表だったのだ。

この『Back To The Tracks』も、ジャケット・デザインも決まり、録音も終わっていながら、何故か1980年代までお蔵入りだった。

ティナ・ブルックスといえば、そのジャケット・デザインのカッコ良さや、フレディ・ハーバードとの競演などから『True Blue』を推薦する方々が多い。しかしここで『Back To The Tracks』を選んだのは、その “哀愁度” からだ。

くすんだ憂いを秘めたティナの音色に合うトランペッターはフレディ・ハーバードではなく、『Back To The Tracks』に参加しているブルー・ミッチェルの方だ。そう、ブルー・ミッチェルの “哀愁度” もティナに負けず劣らず高いのだ。それにピアノはケニー・ドリューとくる。だからこのアルバム全体の “哀愁度” はかなり高いのだ。

ノリのいいハード・バップ調のナンバーながら、微量の刹那さがポロリと零れ落ちるタイトル曲《Back To The Tracks》、ジャッキー・マクリーンも加わり、まるでジャズ演歌のような憂いが充満している《Street Singer》。う~ん、何となく切なくて、ちょっと辛いなぁ~。これこそまさに “True Blue” な雰囲気だ。ウイスキーをストレートでキュッと飲みながら、深夜に一人で聴きたいなぁ~。

メロディーのセンスも抜群だし、作曲力も優れている。しかし何故ティナ・ブルックスは売れなかったのか?

『True Blue』1960年6月録音。『Back To The Tracks』1960年9月・10月録音。

その頃、既にハード・バップは黄昏ていた。時代は次の新しいジャズを求めていた。

“哀愁” のハード・バップ調ナンバーしか作曲・演奏出来ないティナ・ブルックスは遅れてきたジャズ・マンなのだ。

しかしティナ・ブルックスの音楽からは隠れた魅力が滲み出ている。

ティナ・ブルックスの人生の秋を聴くべし。

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True Blue / トゥルー・ブルー

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