2004年8月30日月曜日

Duke Ellington / デューク・エリントン


Money Jungle / マネー・ジャングル
1962

凄い二人を従えている。

マックス・ローチといえば、ビ・バップを代表するような頭脳派の名ドラマーだ。そんなローチがジャケットの写真ではまるで御用聞きのように下手に出ながら、ご機嫌を伺っている。

チャーリー・ミンガスは頭にきてバンドのメンバーにパンチを食らわし、前歯をへし折ったことがあるらしい。そんなミンガスがジャケットの写真では子供のように恐れおののき、呆然としながらベースを抱えている。

そんな二人の視線の先にいるのは好々爺のようにピアノの前に大人しく座っている初老の男。

その男こそ御大デューク・エリントン。

ジャズ界のドンの前ではローチやミンガスですら雑魚なのだ。

このアルバムでエリントンが叩き出すピアノはとてつもなく恐ろしい。こんなにヤバくて、凶暴さに溢れたアルバムはそうあるものではない。

一曲目の《Money Jungle》ではエリントンのピアノは荒っぽく空間を切り裂く。それは垂直に振り下ろされる斧のようにざらついた迫力に満ち溢れている。ミンガスはベー スの弦から音をむしり取るように掻き鳴らし、ローチもいつもの冷静さを忘れたようにドラムから音を打ち出す作業に専念している。まるでちゃんとした音にな る前の音がぶつかり合っているような凄みがある。

その他にも《Switch Blade》や《REM Blues》など、ジャズやブルースの骨格だけをさらし出したようなドス黒くて荒っぽい、異様なまでに説得力のある音楽がたっぷり収録されている。

ここで鳴り響く音楽は、圧倒的な存在感と共に、高い壁のようにそびえ立っている。

見上げて聴くべし。そしてビビるべし。

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