2010年1月22日金曜日

追悼 : Otmar Suitner / オトマール・スウィトナー


指揮者、Otmar Suitner / オトマール・スウィトナーが1月8日、ベルリンで亡くなった。

享年87歳。

新聞は何時もざぁ~っと斜め読みだし、テレビもあまり見ないので、私は情報に疎い。

今朝ネットで雑件を調べていたら、偶然オトマール・スウィトナーの死亡記事が目に留り、驚いた。

スウィトナーはかなり前から引退していたので、もう既に亡くなられているものと勝手に思い込んでいたからだ。

どこかで読んだけれど、指揮は全身運動だからスポーツをするのと同じで、体に良く、結果として指揮者は長生きする場合が多いとのこと。

しかしこの説、本当かな?



オトマール・スウィトナーは1922年にオーストリア・インスブルックで生まれた。

だからスウィトナーは1908年に生まれたヘルベルト・フォン・カラヤンより14歳年下になる。

スウィトナーと同世代の指揮者たち、例えば1923年生まれのウォルフガング・サヴァリッシュ、にとって、カラヤンが生まれた1908年の前後10年間に生まれた先輩指揮者たちは、“目の上のたんこぶ” 的な存在だったのだろう。お陰でスウィトナーと同世代の指揮者たちは美味しいポストに恵まれず、難儀な時代を生きることを余儀なくされたのではないだろうか?

スウィトナーやサヴァリッシュが40代に入り、指揮者としての実力が花開こうとしていた1960年代半ば、カラヤンは既にベルリン・フィルを牛耳り、クラシック界の帝王として君臨していた。

そして当時は、

カール・ベーム(1894年生まれ)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900年生まれ)
オイゲン・ヨッフム(1902年生まれ)

ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908年生まれ)

ルドルフ・ケンペ (1910年生まれ)
セルジュ・チェリビダッケ(1912年生まれ)
ゲオルク・ショルティ(1912年生まれ)
ラファエル・クーベリック(1914年生まれ) など、

スウィトナーと同じく独墺系の音楽を得意とする “カラヤン前後” 世代の錚々たる指揮者たちがヨーロッパで活躍していた時代だった。

そんな時代にスウィトナーは1960年にはドレスデン国立歌劇場、1964年にはベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任する。ある意味では、西側で恵まれたポジションを得ることが出来ず、ベルリンの壁の向こう側、共産主義国家・東ドイツへの “都落ち” 的な感じが否めない。

だからスウィトナーが残した名演は、西側の有名なオーケストラを指揮したものではなく、ドレスデン国立歌劇場の専属オーケストラで、いぶし銀の響きを誇るシュターツカペレ・ドレスデンを指揮したものに多い。

今風に言うと、“グローバルスタンダード化” が進んでいたベルリン・フィルやウィーン・フィルではなく、古き良き時代の響きが未だ残っていたシュターツカペレ・ドレスデンを指揮することが出来たのは、スウィトナーにとって幸運だったのかもしれない。

スウィトナーがシュターツカペレ・ドレスデンを指揮したモーツァルトは、交響曲も素晴らしいが、端正で凛々しい《魔笛》が絶品だ。

またティンパニが大暴れし、とてつもなく荒々しく、大地の匂いがプンプンするストラヴィンスキーの《春の祭典》も素晴らしい。

しかしスウィトナーは東ドイツを中心に活躍していた為か、未だに過小評価されているような気がする。

その辺りが残念でならない。

合掌。


Wolfgang Amadeus Mozart / ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
Die Zauberflöte / 魔笛
Otmar Suitner / オトマール・スウィトナー
Staatskapelle Dresden / シュターツカペレ・ドレスデン
rec. 1970


Igor Stravinsky / イーゴル・ストラヴィンスキー
Le Sacre du Printemps / 春の祭典
Otmar Suitner / オトマール・スウィトナー
Staatskapelle Dresden / シュターツカペレ・ドレスデン
rec. 1962

update 2010/01/22

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