2004年10月10日日曜日
Ravel, Maurice / モーリス・ラヴェル
Ravel, Maurice 1875-1937
ラヴェルの音楽は色彩感溢れているが、それに流されない確固とした構成に支えられている。
そしてリズムはノリがいいと言うより、時計仕掛のように正確で抑制されている。
色彩の炸裂、構成力、工業的なリズム、これらはその時代の近代絵画にも共通する要素で、ラヴェルが生きた時代のトレンドでもある。
しかしラヴェルの音楽の奥底には鼻持ちならないスノップ感が潜んでいる。
それは時代を体現した男のプライドから生まれたものかもしれない。かなり高慢で生意気な男だったと思うが、そのいやらしさを聴きながら楽しむのも良し。
Daphnis et Chloé / ダフニスとクロエ
JEAN MARTINON / ジャン・マルティノン
Orchestre de Paris / パリ管弦楽団
rec. 1974
ロシア人興行師セルゲイ・ディアギレフからの依頼によるバレエ曲。年代的にはストラヴィンスキーの《春の祭典》以降に作曲されている。だからかどうか知らないが、このバレエ曲はドビュッシー的味覚にストラヴィンスキー的スパイスを加え、ギリシア風味に仕上げた料理のようだ。
几帳面なナルシストが作り上げた古代フレスコ風音楽絵巻ではあるが、工業化が始まった近代の匂いをぷんぷんさせている作品。
三島由紀夫の感想を聞いてみたい一曲。
組曲版も多いが、せっかく聴くのなら全曲版を選ぶべし。
Bolero / ボレロ
JEAN MARTINON / ジャン・マルティノン
Orchestre de Paris / パリ管弦楽団
rec. 1974
安物の香水の匂いを辺りに撒き散らすような刺激的で悪趣味な曲だ。
しかしながらこんなB級グルメ的な曲が時々無性に聴きたくなる。
だから自己弁護の為に少しだけ誉めておこう。「全体を巧くコントロールしながら徐々にボルテージを上げ、最後まで引っ張る手法は、さすがだね、ラヴェル君」。
比較的均整のとれたマルティノン盤を選ぶとする。
Gaspard de la Nuit / 夜のガスパール
Martha Argerich / マルタ・アルゲリッチ (ピアノ)
rec. 1974
この耽美的で小悪魔的な曲は19世紀の詩人、アロイジウス・ベルトランの同名の散文詩をモチーフにしている。
シャルル・ボードレールが “発掘” し、アンドレ・ブルトンが「詩においてシュールレアリスムの先駆け」と称賛した作品から、特に幻想的で怪奇趣味の強い3篇、『水の精』、『絞首台』、『スカルポ』をイメージしてラヴェルはこのピアノ曲を生み出す。
次ぎのトレンドを敏感に嗅ぎ取るとは、本当にイヤミでキザなヤツだぜ、ラヴェルは。
アルゲリッチが巫女的放心・陶酔感で弾きまくる本盤を選ぼう。ラヴェルが要求する超絶的な名人芸も彼女なら大丈夫だ。
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