2004年1月20日火曜日
パサデナで食べたハンバーガー
一度だけアメリカに行ったことがある。
それは94年6月、アメリカ・ワールドカップ直前の爽やかな気候の頃だった。
観光ではなく仕事でロサンゼルス郊外のパサデナという街に1週間程滞在した。
取引先との打合せでわざわざアメリカまで出張することになった訳だ。
先方の担当者(当然アメリカ人)J・Cは気を使っていろいろなレストランに招待してくれた。ハリウッドの有名的俳優、ケビン・コスナーが経営するレストランや一番流行っているカフェやなんかにも連れて行ってくれた。しかし残念ながらどこの料理も大して美味しくなかった。せっかく気を使って色々なところへ招待 してくれたJ・Cには悪いがそれは本当だ。
だから食は亜米利加に無し!とでも断言したいところだが、そうでもないのだ。感動したものが一つだけあった。
それは Jake's of Pasadena のハンバーガーだ。
その日は休日だった。だから10時頃にホテルを出て、街の外れにある小さな美術館を訪れた。その後はメイン・ストリート周辺をぶらぶら散歩をして過ごした。 初夏の陽射しが気持ちのいい一日で、街を行き交う人々ものんびりとしている。
こんな時にはシカゴの名曲《Saturday in the Park / サタデー・イン・ザ・パーク》の軽いメロディーが頭の中で流れ出す。
しかしそんなのどかな一日でも必ずお腹は減ってくる。もう正午は過ぎているし、さあ、どこで昼飯を・・・。そんな事を考えていると小さなお店が視界に飛び込んできた。
うん、イケそうだ
そこでは二人のお兄ちゃんが一心不乱にハンバーグを焼いていた。
二人共タンクトップ姿でキャップを逆さにかぶりながらハンバーグを焼いていた。よく見ると一人は肩のあたりに花柄のタトゥーを入れている。
うっすらと汗を滲ませた額を上げながら、一人が「ハ~~イ!」と威勢良く声をかけてきたので、こちらも「ハ~~イ!」と答え、カウンター席に腰を下ろした。
壁に貼られたメニューをざっと見渡し、チーズバーガーとフライドポテト、それとビールを頼んだ。
辺りには肉の焼けた香ばしい匂いが充満している。それに店内に流れる音楽はサザン・ロック。よく覚えていないが多分レーナード・スキナードあたりだったと思う。
う~ん、アメリカだなぁ、と一人でいい気分になっているとお兄 ちゃんが話しかけてきた。「何処から来たんだい?」と聞かれたから「野暮な仕事で日本から」と答える。「焼き加減は?」と聞かれたから「レアで」と答える。
そして待つこと約5分。
運ばれてきたトレイの中身は全てが大きく、分厚く、太い。
ハンバーグの割れ目からは血と肉汁 が絡みながらとろりと沁み出している。それを下のレタスがこぼれないように受け止める。レアに焼き上がった肉の上には熱で溶けたチーズと分厚いトマトやオニオンのスライス。
そしてハンバーガーの横にはフライドポテトが山盛り付いている。じゃがいもの皮がついたままの、太くて存在感たっぷりのフライドポ テトだ。
美味な肉汁をこぼさないように細心の注意をはらいながら、大きなハンバーガーにかぶりつく。男の指ほど太くて無骨なフライドポテトを口に放り込む。そして聴こえてくるのはサザン・ロックの絡みつくようなサウンド。
是即亜米利加的至福食事瞬間也!
それはシンプルで粗野だ。しかしそこには肉や野菜の旨みがしっかり詰まっていた。
そんなハンバーガーをもう一度食べたい。
Lynyrd Skynyrd / レーナード・スキナード
update 2004/01
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