2004年9月20日月曜日
Yamamoto Hozan / 山本邦山
Silver World / 銀界
1970
雨は嫌いだ。
雨の日に外出すれば、いくら傘をさしても服は濡れるし、靴は湿っぽくなる。それに傘なんかをさして歩くのは難儀だ。だから雨は嫌いだ。
しかしサラリーマンだからそんな日でも休めない。傘をさして最寄駅まで行き、傘をさして得意先まで出向かなければ。ああ、何と因果な商売だ。
いくら雨が嫌いでも、雨が降らないと水不足になる。それに植物は育たない。だから雨は必要悪みたいなものだ。誰かが夜の間にだけ雨が降るような気象学的新技術を開発してくれればいいなぁ、といつも思う。
だが勝手なのもで、外出する予定が無い日の雨はさほど気にならない。
秋の足音が聞こえ、少し肌寒くなる頃の日曜日の午後。窓の外を見ると、空は薄めた墨を流したような灰色。しとしとと雨が降っている。そんな時に聴きたくなるのが『銀界』だ。
菊地雅章(p)、当時京都の禅寺にこもって修行をしていたゲイリー・ピーコック(b)、そして村上寛(ds)のサボート陣が緻密な工芸品、まるで寄木細工のようなサウンドを紡ぎ出す。そこにからまるのが山本邦山の尺八。その音色はモノクロだが濃淡のニュアンスにすぐれたもので、それはまるで水面に落とした一滴の墨のように辺りに広がる。
尺八のウッディな響きとピアノの硬質な響きの絡み合いが生み出す張りつめたサウンドを楽しむには、よく冷やした辛口の吟醸酒をちびちび飲みながら聴くのがいい。
微かに雨音が聴こえれば、更にいい。
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音楽
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