2004年9月20日月曜日

Weather Report / ウエザー・リポート


Weather Report / ウエザー・リポート
1971

絵を描くとする。

風景画、人物画のような具象画、それとも抽象画?

音楽は絵画のように外界を具体的に描写することが無いので、抽象的で純度の高いものだと考えられていた。しかし音楽が情景を描写することもある。

ウエザー・リポートはジョー・ザヴィヌル、ウエイン・ショーター、ミロスラフ・ヴィトウスの三人が中心になり結成された。

最初は仲良し三人組だったのかもしれない。しかしこのバンドの実質的なリーダー、お山の大将はザヴィヌルで、まず最初にヴィトウスが意見が合わずに出て行った。ショーターは辞めなかったが、ザヴィヌルに冷や飯を食わされていた時期もある。

つまりウエザー・リポートはザヴィヌル中心のバンドで、ザヴィヌルの音楽的傾向がグループのカラーとして出ている。彼が創り出したいものは抽象画タッチの風景描写音楽みたいなもので、それは今日的な標題音楽ともいえる。

デビュー・アルバムである本作の一曲目《Milky Way》を聴いてみよう。ここでは音響効果を生かしたサウンド・コラージュ的な手法を使いながら、テーマである “Milky Way = 天の川” を宇宙的な広がりの中で見事に描いている。それは絵画的で、ナレーティブなものだ。

本作以降のヴィトウスがまだ参加している時期のアルバム・タイトルをチェックしてみると面白い事に気づく。

『I Sing The Body Electric』、『Sweetnighter』、『Mysterious Traveller』、いずれもSF的ではあるが、なんとなくイメージが湧きやすいタイトルばかりだ。

ヴィトウス脱退後はよりファンクなものに音楽的には変化するが、『Black Market』など、標題音楽志向は消えない。シンセサイザーなどを大胆に導入したウエザー・リポートのサウンドは今風に聴こえるが、その音楽志向は意外と伝統的なものだ。これはウィーンで生まれ、育ったザヴィヌルの知的、音楽的バックボーンからくるものか。

なんやかんやと偉そうな事を書いたが、そんなことを忘れて本作を聴いてみよう。どこまでが各自のソロで、どこまでがグループ表現なのかよく分からんサウンド群だが、その殺気を含んだ混沌とした音の塊りは今でも十分衝撃的だ。

And More...


I Sing The Body Electric / アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック


Sweetnighter / スウィートナイター


Mysterious Traveller / ミステリアス・トラベラー


Black Market / ブラック・マーケット


Heavy Weather / ヘヴィ・ウェザー


Mr. Gone / ミスター・ゴーン

0 件のコメント:

コメントを投稿