2004年9月20日月曜日

Thad Jones / サド・ジョーンズ


The Magnificent Thad Jones / ザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ
1956

ミシュラン・ガイドという本がある。

この本に掲載され、料理を評価されて ☆ を得るのはフランス料理人の夢だ。

パリにある無数のレストランの中でも ☆☆☆ を得ているレストランは数軒しかない。

その中でも一番素晴らしいのは“Taillevent / タイユヴァン”だと個人的に思っている。

シャンゼリゼの裏通りにある老舗の高級レストランで、料理もワインも当然美味い。さすがや!と唸らせる。しかしだからといってツンとお高く気取っているわけでもなく、堂々とした構えの中に親しみやすさもある名店だ。

そんなところで美味しい料理を食べて、デザートもきっちり頂く。そして最後に濃いコーヒーと食後酒に年代物のアルマニャックを飲む。

『The Magnificent Thad Jones』は“Taillevent / タイユヴァン”で食後に飲む極上のアルマニャックなのだ。

サド・ジョーンズはジョーンズ三兄弟の真ン中。兄はピアニストのハンクで、弟はドラマーのエルヴィン。サドはカウント・ベイシー楽団に長い間所属し、花形トランペッターであり、名アレンジャーだった。

一曲目は有名なスタンダード・ナンバー《April in Paris》。ゆったりと流れるメロディーに絡みつくように重なるまろやかなサド・ジョーンズのトランペットがたまらんなぁ。《April in Paris》はベイシー楽団のトレードマーク的な曲で、何時でも何処でも演奏されていた。しかしサドは新たなアレンジで手垢のつくほど演奏された曲をこのアルバムで見事に生まれ変わらせている。

バックを同郷のデトロイト出身のメンバーで固め(ドラムのマックス・ローチを除く)、アレンジャーとしての腕を振るいながら、ギミックの無いストレートなトランペットをサドは聴かせてくれる。そこには熟成された蒸留酒のような深いコクと爽やかなキレがある。

鳩の中に佇みながら煙草に火をつけるサド・ジョーンズを捉えたジャケットの写真も洒落てる。

力まずに、穏やかに演奏された大人の風格が漂う名盤だ。

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