2011年6月11日土曜日

「黒い魔神」の咆哮 / 『Get Up With It / ゲット・アップ・ウィズ・イット』


例えばマイルス・デイヴィスの『Get Up With It / ゲット・アップ・ウィズ・イット』。


例えばビートルズの『The Beatles / ザ・ビートルズ』。


例えばローリング・ストーンズの『Exile on Main St. / メイン・ストリートのならず者 』。
※ 私にとってストーンズはミック・テイラーが脱退した時点で一度終わっている。


例えばレッド・ツェッペリンの『Physical Graffiti / フィジカル・グラフィティ』。

長年体内に蓄積され、溜まりに溜まったすべての音楽的エッセンスを吐瀉するかのように、ミュージシャンとしてのキャリア後期に混沌とした大作が生み出されることがある。



マイルス・デイヴィスのエレクトリック期は1968年の『Miles in the sky / マイルス・イン・ザ・スカイ』あたりから始まる。

エレクトリック期と言っても、まだこの頃のマイルスの音楽は、語弊があるかもしれないが、長閑なものだった。

しかし1970年にマイケル・ヘンダーソン(ベース)が加入し、エムトゥーメ(パーカッション)やレジー・ルーカス(ギター)あたりが加入するころからマイルスは大きく変身する。

ロックやファンクなどのエッセンスを貪り食ったマイルスは電気じかけの「黒い魔神」と化し、ワウ・ペダルを導入したトランペットとオルガンで阿鼻叫喚的ブラック・ミュージック曼荼羅を描き始める。

「黒い魔神」の咆哮。
恐るべきマイルス後期の始まりだ。

『Get Up With It / ゲット・アップ・ウィズ・イット』は1970年から1974年までの未発表音源を編集したもので、マイルス後期を代表する混沌とした傑作アルバムだ。

ここには哀しみのレクイエム、浪漫ボサ・ノヴァ、怒涛のブルース、凶悪凶暴テクノから混沌的ラテン&アフロまでがぶち込まれている。

当時のマイルスから心臓、胃袋、肝臓、膵臓、胆嚢、脾臓など、すべての臓腑をえぐり出し、思いっきり絞ると、こんなにドス黒くてドロドロ粘ついた音楽体液がボタボタ落ちてくるのだろうか?

『Agharta / アガルタ』、『Pangaea / パンゲア』ですべての体液を垂れ流した後、マイルスは長い休息期間に突入する。

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