2009年12月23日水曜日

転換期のスペイン / 『Z』を観て思い出したこと


先日、BSで放送された映画『Z』を観た。

『Z』は1969年の作品で、監督はコスタ=ガヴラス、出演者はイヴ・モンタン、ジャン=ルイ・トランティニャンなど。

地中海沿岸の架空の国で、革新政党を率いる国会議員Z氏は暴漢に襲われた後、死亡する。調査に乗り出した予審判事はそこに政治的な陰謀を見つけ出す・・・。 こんなストーリーの左翼的な政治色の強い映画だ。



私は1976年秋、スペインのサラマンカで初めて『Z』を観た。

その頃、スペインは歴史的な転換期を迎えていた。

前年の1975年11月20日、独裁者フランシスコ・フランコが死去し、第二次世界大戦後も生き延びた独裁政権にもついに終止符が打たれ、翌年の1977年6月15日に実施される41年ぶりの総選挙に向けて、民主化が進んでいた。

この時期に、かつては上映が禁止されていた政治の強い映画、暴力や性描写の多い “好ましくない映画” が一挙に解禁された。

『Z』、同じくコスタ=ガヴラスの『告白』、『戒厳令』、チャーリー・チャップリンの『独裁者』、スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』などが上映され始めた。



久しぶりに『Z』を観て、私はあの頃のスペインに流れていたあの歌とあの男の姿を思い出した。

41年ぶりの総選挙を翌年に控えた1976年。その頃、バーのジュークボックスやラジオからJarcha / ハルチャの《Libertad sin ira》(怒りの無い自由)が頻繁に流れていた。まるで民主化と総選挙のキャンペーンソングのように。

そしてJarcha / ハルチャの《Libertad sin ira》と一緒に思い出すのが、当時34歳、ノーネクタイ姿が新鮮だった若かりし頃のFelipe González / フェリペ・ゴンサレス。

彼は既にスペイン社会労働党(PSOE:Partido Socialista Obrero Español)の書記長を務めていた。

ラフな格好で浅黒く日焼けしたフェリペ・ゴンサレスの笑顔が大きく印刷されたPSOEのポスターは、街中にそれまでに無かった明るい色彩のアクセントを与えていた。

私にとって、ハルチャの《Libertad sin ira》とフェリペ・ゴンサレスが微笑むカラフルなPSOEのポスターは、一挙に解禁された多くの映画と共に、スペインの歴史的な転換期を象徴するものだ。

《Libertad sin ira》

Dicen los viejos que en este país hubo una guerra
Que hay dos Españas que guardan aún el rencor de viejas deudas

Dicen los viejos que este país necesita palo largo y mano dura
Para evitar lo peor

Pero yo sólo he visto gente que sufre y calla, dolor y miedo
Gente que sólo desea su pan, su hembra y la fiesta en paz

Libertad, libertad sin ira libertad
Guárdate tu miedo y tu ira

Porque hay libertad sin ira libertad
Y si no la hay sin duda la habrá

Dicen los viejos que hacemos lo que nos da la gana
Y no es posible que así pueda haber gobierno que gobierne nada

Dicen los viejos que no se nos dé rienda suelta
Que todos aquí llevamos la violencia a flor de piel

Pero yo sólo he visto gente muy obediente, hasta en la cama
Gente que tan sólo pide vivir su vida, sin más mentiras y en paz

Libertad, libertad sin ira libertad
Guárdate tu miedo y tu ira

Porque hay libertad sin ira libertad
Y si no la hay sin duda la habrá


update 2009/12/23

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