2009年11月6日金曜日

Sly & The Family Stone / スライ & ザ・ファミリー・ストーン


There's a Riot Goin' On / 暴動
1971

これほどまで “鬱” なファンクは無い。

一瞬の高揚感を打ち消すような、暗澹として、黒い倦怠感が渦巻く、重い音の暴動。

ラジオから流れてきた《Family Affair / ファミリー・アフェア》を初めて聴いた時、高校一年生の頃だったと思う、そのねっとりとした、けだるくて不吉な感覚に、背筋がゾクゾクしたことを憶えている。

耳元で囁くように、ルーズで無気力に歌うスライ・ストーン。

これでは「黒い呪術師」が唱える呪文ではないか・・・。



『There's a Riot Goin' On / 暴動』を録音していた頃、スライ・ストーンの精神は薬物使用により破綻していたらしい。

薬物使用の理由は、前作の『Stand ! / スタンド !』がもたらした商業的な大成功からの焦りからか、“Love & Peace” の時代が終焉した喪失感によるものか、それとも白人メンバーの排斥を求める黒人選民思想集団、“ブラック・パンサー” からのプレッシャーからか、その辺りの事は判らない。

ちなみにビル・エヴァンスが1958年にマイルス・デイヴィスのバンドに加わった時、白人であるビルの排斥を求める動きがあったらしい。その時、マイルスは「いいプレーをするなら緑色のヤツだってメンバーに加える!」とタンカを切ったという。

しかしこんなに “鬱” なファンク・グルーヴを生み出すとは、その半分が薬物使用の影響ではなく、スライ・ストーン自身の純粋な音楽的なセンスにより意図的に作られたものであったとしても、ただ事ではない。



政治的、社会的な側面を残しながらも明るいアルバム『Stand ! / スタンド !』、暗くて深い、救済の無いダウンなアルバム『There's a Riot Goin' On / 暴動』、そして表面的には明るさと躍動感を取り戻した『Fresh / フレッシュ』。

1969年から1973年までのスライの音楽は、素晴らしくも、辛く、切ない。

狂いだした歯車の軋む音が向こう側から聞こえてきそうだ。


Stand ! / スタンド !


Fresh / フレッシュ

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