2009年10月24日土曜日

枯葉舞う晩秋の風景には / 『エクソシスト』


私には霊感が無い。

幽霊を見たことも無ければ、超常現象と呼ばれるような状況に陥ったことも無い。

これは才能(?)の欠如、又はその手の情報を受信するべきシステムに生まれてからず~っとシステム・エラーが起きているのか、それとも単なる鈍感なのか、その辺りのことは判らない。

不思議なもので、そんな私だが、無い物強請り(ないものねだり)なのか、超常現象関連のTV番組は大好きだ。

「霊能力者・下ヨシ子、魔界潜入!」みたいな見出しを見ると、ついつい録画し、息子と一緒に食い入るように観てしまう。

しかしながら個人的には死んでしまえば、それで全ては終り。後にはな~んにも残らないと思っている。



私の世代の人々にとって、超常現象を扱った恐怖映画といえば、泣く子も黙る『The Exorcist / エクソシスト』だろう。

この映画、実は大好きなのです。

但し、悪霊に取り憑かれた少女、リーガンが出てくる場面を除いて。

それまでの多くの恐怖映画と比べて、この映画の完成度は抜群に高い。

悪霊パズズの像を発見すイラクの古代遺跡発掘現場から始まる不気味な雰囲気の描写。こちらをにらめつける片目の男、野良犬同士の戦い、老ランカスター・メリン神父を危うく轢きそうになる馬車の暴走・・・。

最初の5分で見事にぐぐ~っと物語へ引き込む。

そしてシーンはアメリカへ。ワシントンD.C.近郊、晩秋のジョージタウンへと変わる。

この晩秋のジョージタウンの描写が好きなんですねぇ。しっとりとっした、枯葉の舞う街並みが素晴らしい。まさに Autumn In Georgetown。

また、街の晩秋の描写と平行して描かれる人々の存在感。

人生の晩秋を迎えて孤独な日々を過ごし、精神を病んだダミアン・カラス神父の母親とそれを苦にするカラス神父の心の葛藤。

静かに余生を過ごすことを望んでいる人生の晩秋の真っ只中の老ランカスター・メリン神父の戸惑い。

そして、そろそろ引退が真近な、仕事人として晩秋を迎えているキンダーマン警部の渋さ。



この映画の監督は前作『The French Connection / フレンチ・コネクション』でアカデミー監督賞を受賞したウィリアム・フリードキン。

隠し味である晩秋(私の超個人的な解釈)を見事に、ひっそりと描き出している。

いや~、前作もそうだが、『The Exorcist / エクソシスト』でのフリードキンの抑制されたクールな映像のシャープさは本当に素晴らしい。

この晩秋の淋しくも冷たい美しさを音楽で支えるのがマイク・オールドフィールドの名曲、《チューブラー・ベルズ》。

そんな訳で、私にとって枯葉舞う晩秋の風景の音楽といえば、《チューブラー・ベルズ》のメロディーなのだ。

個人的に、これからの季節にピッタリな曲を選ぶとすると、《チューブラー・ベルズ》はかなり上位に食い込んでくるだろう。



アルバム『Tubular Bells / チューブラー・ベルズ』がリリースされたのが1973年、映画『The Exorcist / エクソシスト』が封切られたのも1973年、つまり同時期だ。

こんな曲をサッと選んでくるあたり、ウィリアム・フリードキンの感覚は冴えている。

ちなみに前作『The French Connection / フレンチ・コネクション』ではドン・エリスの音楽を起用している。この辺りも見事な選択だ。

ついでに書いておくと、ウィリアム・フリードキンの最初の嫁サンはフランスの名女優、Jeanne Moreau / ジャンヌ・モロー。これもお見事。


Mike Oldfield / マイク・オールドフィールド
Tubular Bells / チューブラー・ベルズ

update 2009/10/24

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