2004年9月28日火曜日

Berlioz, Hector / エクトル・ベルリオーズ


Berlioz, Hector / エクトル・ベルリオーズ 1803-1869

19世紀、フランスは多くの優れた作家や画家を輩出した。

しかし音楽家となると、お隣のドイツに比べて、フランスは分が悪い。

そこでエクトル・ベルリオーズ、である。

フランス人はベルリオーズを大変誇りに思っている、と私は思っている。

ドイツの音楽家と比べても遜色がない、フランスが誇る大音楽家だからこそ、ベルリオーズの肖像はかつてフランス10フラン紙幣(1972年~1978年)に描かれていたはずだ。

話は横にそれるが、10フラン硬貨の導入により、ベルリオーズ10フラン紙幣は短命に終わった。その後、20フラン紙幣(1980年~1997年)にはドビュッシーの肖像が描かれた。

しかしベルリオーズは今で言うところの “一発屋” だった。

ベルリオーズはある程度の量の作品を残したが、27歳の時に作曲した最初の交響曲、『幻想交響曲』を上回るインパクトを持つ作品は無い。



Symphonie Fantastique / 幻想交響曲


Charles Munch / シャルル・ミュンシュ
Orchestre de Paris / パリ管弦楽団
rec. 1967


Igor Markevitch / イーゴリ・マルケヴィチ
Orchestre Lamoureux / ラムルー管弦楽団
rec. 1961

原題は『ある芸術家の生涯の出来事、5部の幻想的交響曲』(Épisode de la vie d'un artiste, symphonie fantastique en cinq parties )。

この曲はある芸術家が恋に絶望し、自棄を起こして阿片を吸い、その時に見た幻想を音楽で表現したものらしいが、簡単に言えば、これはベルリオーズが自身の失恋体験をモチーフにした私小説的な標題音楽だ。

第1楽章 「夢、情熱」 (Rêveries, Passions)
第2楽章 「舞踏会」 (Un bal)
第3楽章 「野の風景」 (Scène aux champs)
第4楽章 「断頭台への行進」 (Marche au supplice)
第5楽章 「魔女の夜宴の夢」 (Songe d'une nuit du Sabbat)

以上の5部構成による、とてもカラフルでサイケデリックな交響曲だ。

ミュンシュはまるでロック・バンドのようにパリ管弦楽団をグイグイとドライブさせ、圧倒的な迫力で一気に駆け抜ける。フランス的な理知的お上品さなどは一切かなぐり捨てた怒涛の疾走感がたまらん。

マルケヴィチはスピーディーな演奏の中で多彩な音の塊をぶつけ合わせる。そのギラリと不気味に光る『幻想交響曲』は個性的で、この曲に内臓されている狂気とグロテスクさを見事にえぐりだす。

一押しはミュンシュ盤で、セカンド・チョイスにはマルケヴィチ盤。

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