2011年5月10日火曜日

Marc Benno / マーク・ベノ


Minnows / 雑魚
1971

長い間聴いていなくても、或る日突然、急に聴きたくなる音楽がある。
長い間潜伏していた熱病が、或る日突然、急に再発病するようなものだ。
そしてその音楽をヘヴィー・ローテーション的に聴きまくる日々が続く。

私にとって『Minnows / 雑魚』はそんなアルバムの一枚だ。

どんよりとした空の下、波止場の桟橋で一人ぼんやりと想いにふける男。
ジャケットからアーシーな音の Somethin' Else がじんわりと滲み出ている。

くすんだ渋めのヴォーカルと派手さのないシンプルなギターが、重心の低い、ねっとりとした味わい深い世界を作り出している。自分の好きな音楽を身の丈に合ったサイズで演奏しているようで、聴いていて、とても親近感が持てる。

このアルバムにはブルースやソウル、そしてゴスペルやカントリーなどアメリカン・ルーツ音楽が雑煮的にたっぷり詰まっている。

マーク・ベノは一時期レオン・ラッセルと一緒にAsylum Choir / アサイラム・クワイア名義でサイケでポップな音作りをしていた時期もあり、その辺りの音の感覚もこのアルバムには未だ少し残っている。

またマーク・ベノはドアーズの『L.A. Woman:ドアーズ/L.A.ウーマン』(1971)のセッションに参加していたようで、その影響か、晩年のドアーズっぽい、肉厚で重いブルース・ナンバーも収録されている。

このアルバムでマーク・ベノのバックを支えるのは、クラレンス・ホワイト(G)、ボビー・ウーマック(G)、カール・レイドル(B)、ジム・ケルトナー(Dr)などで、当時のオール・アメリカン・バンド的な編成だ。

しかし『Minnows / 雑魚』とは何と見事な和訳だろう。Minnows / めだか と直訳していたら、ちょっと興醒めだ。ジャケット写真とアルバムに詰まった音の雰囲気を見事に表した和訳に拍手を送りたい。

ジャケット、タイトル、そして中身の音楽、すべてが素晴らしい隠れ名盤的一枚。

タイトルは雑魚だが、マーク・ベノは雑魚ではない!

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